ローラチェーンの給油・潤滑の方法

ローラチェーンにおける給油・潤滑の重要性

ローラチェーン伝動において、給油・潤滑の重要性を見逃してはなりません。伝動部の設計でチェーンやスプロケットの選定に注意を注いでも、チェーン潤滑をおろそかにすると、完全なチェーン伝動が得られないばかりでなく、チェーン本来の寿命を損ない、機械そのものにも計り知れない悪影響をおよぼします。それゆえ、チェーン伝動にあたっては、潤滑について特にご注意ください。

給油・潤滑の効能

ローラーチェーンは、運転によりチェーンが伸びてゆきます。 この伸びには、運転が始まってしばらくの間におこる初期伸びと運転によって徐々に発生する伸びがあります。 初期伸びは、ピン、ブシュなどの接触面がなじむことで起こるもので、運転が開始してから数10時間に発生します。 それ以降、徐々にすすむ伸びは、ピン、ブシュが屈曲するときに接触により表面が摩耗して生じます。

そこで、チェーン潤滑をすることでピン、ブシュ間に油膜をつくり金属同士の接触をなくします。これにより、摩耗の発生を少なくし、チェーンの寿命を伸ばすことになります。 また、チェーン潤滑で生じた油膜は、チェーンに掛かる衝撃を吸収したり、高速運転による発熱を冷却する効果も果たします。

給油する場所

ローラチェーンの給油では、屈曲による摩擦がおこるピンとブシュの間隙、ブシュとローラ間、内外プレート間に十分油が浸透するよう行います。 この部分に油を浸透させるために、チェーンの弛み側のスパンで外プレートと内プレートの隙間に注入するようにします。

吊り下げ伝動で使用しているローラチェーンに給油する場合は、弛み側がありません。そこで、できるだけチェーンに掛かる負荷を取り除いて、プレートの間隙に油が充分浸透するようにしてください。 また、チェーン取り付け用の端末金具でチェーンと連結部分にも給油してください。

吊り下げに使用するチェーンには、腐食防止のためチェーンにグリースを厚く塗布していることがあります。チェーン給油でグリースを除去した場合は、もとどおりグリースを塗布してください。

潤滑油の決定

一般雰囲気中の場合

潤滑油の選定には、ローラチェーン伝動の周囲の雰囲気温度やチェーン速度により変えなければなりません。 一般雰囲気中では、モビール油を使用して次表により選定してください。

周囲の雰囲気温度 粘度
摂氏℃ 華氏 °F
-6.7 ~ 4.4 20 ~ 40 SAE20
4.4 ~ 38 40 ~ 100 SAE30
38 ~ 49 100 ~ 120 SAE40
49 ~ 60 120 ~ 140 SAE50

高温雰囲気中の場合

約150℃を越える伝動条件での潤滑油は、石油系の潤滑油では酸化され性能が劣化するため、カーボンテトラクロライド(四塩化炭素)または石油成分を取り除いたコロラテド状のグラハイトを揮発性流体に混ぜた潤滑油や二硫化モリブデンによる摩擦面の被膜処理が効果的になります。

摩耗雰囲気中の場合

摩耗雰囲気中で伝動する場合の潤滑油は、ベトロラタムのようなゼリー状の鉱油や非流動体油(グリース)またはグリースに二硫化モリブデン、グラハイトを添加したもの)が適当です。これをピンとブシュの間に完全に浸透させることで、摩耗を促進する土砂、塞などの侵入を防止します。 また、常時、給油の不可能な運転条件のときでも、一回の給油の寿命が長いため、ある程度無給油運転が可能です。

潤滑の方法

潤滑方法の決定は、チェーン選定を行った伝動kW表に表示された潤滑方法で行います。 伝動kW表の潤滑形式は次の通りです。

人手による給油法

この方法は摩耗性雰囲気でないオープンドライブの場合に行ないます。 このときチェーン速度は小さく、荷重力の伝動に限られ、方法としてピンとローラーリンクの間隊に油さし、またはブラシで給油します。 給油量は、一般に8時間毎に軸受部が乾燥しない程度に行ないます。

滴下給油法

この方法も低速で低荷重の場合の潤滑形式です。これはチェーンの下側スパン部分に、油が滴下できるよう配置したパイプから給油を行い、簡単なケーシングをつけます。 給油量はチェーン1列につき、毎分4~10滴(100cc/hr以下)になります。

油浴潤滑法

これは密閉ケーシング中のドライブの最も簡単な形式で中低速運転に適します。ピン、ブシュの接触面に強制的に油を浸透させるため、下側スプロケットの歯先から約12mmまで浸されるようオイルレベルを取ります。

油面が高いと攪拌作用で油温が上昇して油質の劣化を伴うため避けて下さい。

円盤潤滑法

油浴潤滑のできない場合に円盤を下側スプロケットに取り付け自動給油する形式です。 円盤を約12mm程度油に浸け、円盤の遠心力で油をはね、チェーンに給油します。 チェーン幅125mm以上の場合には、円盤を左右に取りつけます。

強制給油法

高速、重荷重伝動の場合や、油浴潤滑法、円盤潤滑法ができない伝動条件で使用します。一般には3L/minのポンプを設置し、吸入側にはオイル清浄器、流量調整バルブ(油温上昇の大きな場合は冷却器)を取りつけ、給油側には給油状況を確認するゲージをつけます。油槽量は15L~45Lが適当となります。